- エルサレムの歴史
- ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の成り立ちと聖地の由来
- エルサレムに聖地が集中していることで引き起こされている国際問題
きはち
エルサレムは、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の聖地ということもあり、古代から十字軍遠征などの争いが続いています。
現代においてもイスラエル・パレスチナ問題と名前を変えて、イスラエル・パレスチナ双方がエルサレムを首都と主張して対立しています。
そんな争いの種となっているエルサレム、なぜ1km四方の旧市街地に3宗教の聖地が集中しているのでしょうか。
その理由は、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教が同一の神を信仰しており、その中心地がエルサレムだったから。
きはち
今回は、その歴史的経緯について解説したいと思います。
目次
エルサレムと3宗教の歴史
ユダヤ民族がエルサレムに王国を築く
第2神殿時代の神殿の丘とエルサレムの模型 @イスラエル博物館
紀元前1000年頃、ユダヤ民族はエルサレムにイスラエル王国をつくりました。その2代目、3代目の王の名前は、ダビデ、ソロモンです。どこかで聞き覚えがある名前ばかりですよね。
エルサレムには、ユダヤ民族の父祖アブラハムが自らの子を唯一神ヤハウェの生贄として捧げようとした際に使われた岩(聖なる岩)がありました。
岩のドーム内部にある聖なる岩。Casa「世界遺産・エルサレム旧市街の最深部へ。特別撮影の「聖なる岩」から「キリストの墓」まで徹底紹介。」より引用。
その聖なる岩にダビデは契約の箱を置き、ソロモンは岩がある丘に神殿を建てました。
以後、古代ユダヤ教の礼拝所となりました。
しかし、周辺国に征服され、ダビデ、ソロモンの王国は滅ぼされてしまいます。その後、西暦70年にローマ帝国により神殿が破壊されました。
『エルサレムの包囲と破壊』 19世紀イギリスの画家デイビッド・ロバーツ
現在、聖なる岩のある丘は神殿の丘と呼ばれており、その神殿の外壁の名残が嘆きの壁です。
嘆きの壁は、かつての神殿に思いを馳せながら祈りを捧げる場所となり、ユダヤ教の聖地となりました。
イエス・キリストはユダヤ人、そしてエルサレムで処刑された
ヴィア・ドロローサ11留 イエス・キリストが十字架に釘づけされた所
周辺国に王国を滅ぼされたユダヤ民族は、紀元前164年、エルサレムでの自治権を獲得します。その時代にイエス・キリストが登場します。※この時点では、イエス・キリストという名前ではなかったですが、便宜上そうしています。
イエスはベツレヘムで生まれ(といういうことになっており)、ガリラヤ湖周辺で山上の垂訓など弟子たちへ教えを説く活動をしていました。
その後、自らを神ヤハウェの子、神の支配の代行者「メシア(預言者・救世主)」と名乗り、当時のユダヤ教を批判し始めます。
ユダヤ教徒の信じるメシアは、「ダビデの子孫から生まれ、ダビデの王国を再建し、世界に平和をもたらす者」と考えていました。
そのため、ぽっと出のイエス・キリストを異端とみなしました。
そして、イエスはエルサレムで死刑判決を受けて、十字架を背負わされて街中を歩かされ、処刑されました。
その道のりがヴィア・ドロローサとして現存し、絶命したとされる場所に建てられたのが聖墳墓教会です。
イエスが絶命した場所であるエルサレムは、キリスト教の聖地となりました。
ヴィア・ドロローサ第3留。イエスが十字架の重みに耐えられず、最初に躓いた場所。わかりやすいように、足元に色を変えた石畳になっています。
その後、イエスの教えが弟子により広まり、キリスト教として世界各地に広まりました。
ヤハウェはキリスト教では「God」、「主」と称されるようになりました。
一方、ユダヤ民族はローマ帝国に反乱を起こすも鎮圧され、離散の民となりました。
そしてキリストを処刑したユダヤ教徒は、キリストを殺した敵と見なされゲットーと呼ばれる地区に隔離されます。
まるで、進撃の巨人のマーレの国内にあるエルディア人隔離地区のように。
※これはゲットーがモデルという説があるようです。
そして、古代から中世にかけて迫害され続け、ナチスドイツのホロコーストなどの虐殺の憂き目に遭う歴史を辿ることになりました。
神殿の丘から預言者ムハンマドが昇天した
一方で、イスラム教は、アッラーと名前が変わったヤハウェを信仰する一神教です。
つまり、ヤハウェ=God(主)=アッラーです。
そのアッラーから最後の預言者ムハンマドを通じて、人々に与えた啓示「コーラン」を信じるのがイスラム教です。
最後の預言者という言葉には、過去にも預言者が存在したことを意味します。
イスラム教では、イエスはその預言者の1人と見なされていますが、神の子という解釈ではありません。あくまで預言者の1人です。
この解釈の違いも、キリスト教とイスラム教が対立する要因にもなっています。
そんなムハンマドが大天使ガブリエルに伴われ、一夜にしてメッカからエルサレムの神殿の丘へ飛び、さきほどの聖なる岩からアッラーの下へ昇天したという伝説があります。
この伝説を記念して、その岩を取り囲むように建てられたのがイスラム教第3の聖地「岩のドーム」です。
こうして、聖なる岩はユダヤ教だけでなく、イスラム教にとっても神聖な岩となりました。
ユダヤ教・キリスト教・イスラム教の違い
以下に、3宗教の違いを簡単にまとめてみました。
唯一神の呼び名 | 最後の預言者 | |
ユダヤ教 | ヤハウェ | 神殿破壊以降、現れていない(ダビデの子孫) |
キリスト教 | God、主 | イエス・キリスト |
イスラム教 | アッラー | ムハンマド |
これら3宗教は唯一神という共通項のもと、密接に絡み合っていることがわかります。
きはち
そして、預言者に対する解釈の違いがそれぞれの宗教の個性とも言えます。
聖地が集中する弊害〜古代から絶えない争い〜
十字軍遠征
“Taking of Jerusalem by the Crusaders, 15th July 1099”
Wikipediaより引用
ユダヤ民族離散以降エルサレムとその周辺は、イスラム王朝が支配してきました。
それに対して、西欧諸国は異教徒によってエルサレムを支配されていることを気に食わず、エルサレム奪還のために度々十字軍を派遣しています。
その際に出来たのが以前紹介したアッコー旧市街地です。
イスラエル北部アッコーの旧市街地(世界遺産)。海と城壁で囲まれた旧市街地は十字軍の名残が色濃く残る街。かのナポレオンも城壁を崩せなかった鉄壁要塞。
十字軍は約8回派遣されており、聖地奪還が大義名分でした。
しかし、中には領土を拡げる野望を抱いた君主がいたり、略奪目的で参戦した者もいたそうです。
そんな十字軍の士気高揚の目的で、異教徒であるユダヤ人が虐殺されてきました。
イスラエル・パレスチナ問題
19世紀後半イスラム教のオスマン帝国の勢力が弱まっていた頃、ヨーロッパ各地で反ユダヤ主義が拡大していました。
その頃からイスラエルの地にユダヤの国を再建しようという動き(シオニズム運動)が巻き起こりました。
その最中、第一次世界大戦でユダヤ人の協力を得たいイギリスは、イスラエルの地へのユダヤ人帰還支援を約束しました。
その裏では、オスマン帝国から独立したいアラブ諸国に対して、イスラエルの地をアラブ人のものと認める協定を結んでいました。
さらには、アラブ周辺の土地を英仏露で分割する協定を結ぶなど、あらゆる方面へいい顔をする三枚舌外交の結果、イスラエルの地でのユダヤとアラブ人の抗争が収拾つかなくなりました。
イスラエルが建国された1948年、エルサレムは国際管理と定められました。
しかし、イスラエル建国を不服とするアラブ各国は、イスラエルへ侵攻し第1次中東戦争が勃発しました。
その結果、イスラエルが勝利し、アラブ人(パレスチナ人)の大半の土地と西エルサレムを占領、旧市街地と東エルサレムはヨルダンが占領する結果となりました。
その後も第2次、3次中東戦争を経てイスラエルがエルサレム全体を占領、一時はエジプトのシナイ半島まで占領しました。
ユダヤ人がエルサレムを支配するのは実に1900年ぶりでした。
現在、パレスチナ自治政府(自治区)はヨルダン川西岸地区とガザ地区の2手に分かれて飛地となりましたが、ガザ地区を支配している「ハマス」とイスラエルは、たびたび武力衝突しています。
そして、ヨルダン川西岸地区はイスラエルにより建設された分離壁によりパレスチナ人の移動の自由が事実上制限されています。
まとめ
- ユダヤ民族がエルサレムに王国築き、「聖なる岩」の神殿を建てた
- イエス・キリストがエルサレムで処刑された
- ムハンマドが「聖なる岩」から昇天したという伝説がある
- ユダヤ教、キリスト教、イスラム教は共に同じ神を信仰している
いかがでしたか?
唯一神との繋がりをもつ聖なる岩、そして、ユダヤ教徒によりイエスが処刑された地となった、エルサレム。
エルサレムの面白さが伝われば幸いです。
そして一度は行ってみたいと思ったアナタ!!
エルサレムなんて旅行できるの?
心の中でこんなフレーズが出たかと思います。
答えはYesです!エルサレムという街について、実際の撮ってきた写真交えて紹介しています。旅行した気分になれますよ!
ぜひ、航空券と宿泊先を確保して行ってみてください!
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